2025年9月、日本でもGoogleの「AIモード」が実装されました。これは検索結果の上部にAIが生成した要約や回答が表示される、まさに検索体験の大きな変革を意味します。ウェブサイトへのトラフィックにどのような影響を与えるのか、私たちのコンテンツ戦略はどうあるべきか、注目が集まる中、iPullRank（アイプルランク）から2025年3月から8月にかけての先行導入国での詳細な分析データが発表されました。
その内容は、現状のSGEの利用実態と、今後の対策を考える上で非常に興味深い。今回は、その主要なポイントを深掘りし、今後の社内におけるコンテンツ制作・運用戦略へのヒントを探ります。
iPullRank分析速報から見えたGoogle AIモードの現状
iPullRankが公開した分析データの6つのポイントはこちら。
① AIモードからの外部サイトへのクリック率（CTR）は約3%未満に留まる
この数字は、多くのデジタルマーケターにとって衝撃的だったかもしれません。AIモードで検索結果の概要が提示されることで、ユーザーが外部サイトへアクセスする必要性を感じにくくなっている現状を示唆しています。ユーザーはAIの要約で情報を完結させてしまう傾向が強く、特定の情報をピンポイントで知りたい、あるいは比較検討したい場合にのみサイトを訪れていると考えられます。
② 権威性の高いドメインにクリックが集中
CTRが低い中でも、クリックを得ているのは「権威性（Authority）」の高いドメインに集中していることが判明しました。これは、Googleが掲げる「E-E-A-T（経験、専門性、権威性、信頼性）」の重要性が、AIモードにおいてもさらに強化されている証拠と言えるでしょう。ユーザーは、AIが提示した情報だけでなく、その情報源の信頼性を重視している傾向が見受けられます。
③ クリック後のエンゲージメントは必ずしも高くない
外部サイトへのクリックがあったとしても、その後のセッション時間やページビュー数といったエンゲージメント指標は、従来の検索からの流入と比較して低い傾向にありました。これは、ユーザーがAIモードで大まかな情報を得た上で、特定の断片的な情報を補完するためにサイトを訪れており、じっくりとコンテンツを読み込む意欲が薄い可能性を示唆しています。
④ AIモードでは、検索クエリが長文化する傾向にある
従来のキーワード検索とは異なり、「人に話しかけるように」質問し、複雑なニーズに対する回答を求めているようです。これは、従来の単一キーワードに最適化するSEO戦略からの転換を迫るものと言えるでしょう。
⑤ トラフィック量は少ないものの、約50%以上の高いコンバージョン率（CVR）を示す
これは、AIモードを利用するユーザーが、より具体的で解決したい課題を抱えている、あるいは購買意欲が高い状態である可能性を示しています。つまり、量が少なくとも質が高く、見込み度の高いユーザーを獲得できるチャネルとなり得る。
⑥ Google検索全体と比較して、AIモードの利用頻度はまだ低い
日本での実装はまだ日が浅いですが、先行導入国でもAIモードの利用頻度は従来のGoogle検索に比べて低い状況です。これは、ユーザーが新しい検索体験に慣れていないこと、あるいはAIモードが提供する価値をまだ十分に理解していないことなどが考えられます。習慣として定着するには、もう少し時間が必要かもしれません。
※参照：Early Referral Data on Google’s AI Mode
まとめ：AIモードを新たな「質的チャネル」と捉える
現状、Google AIモードは量的なトラフィックを期待できるチャネルではありません。しかし、その特性を理解し、E-E-A-Tを意識した高品質なオリジナルコンテンツを制作し続けることで、高いコンバージョン率に繋がる「質の高いユーザー」を獲得できる可能性があります。
AIモードの進化は今後も続くでしょう。この新しい検索体験の動向を継続的にウォッチし、単なるトラフィック源の一つとしてではなく、ユーザーの深いニーズに応えるための「新たな情報提供チャネル」として捉え、柔軟にコンテンツ戦略を適応させていく必要があると感じています。今回のiPullRankの分析を契機に、社内でのコンテンツ制作におけるE-E-A-Tの重要性について、改めて意識を高めていきます。
